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2016年11月10日 (木)

映画 『THE WAVE ウェイヴ』

監督:デニス・ガンゼル、主演:ユルゲン・フォーゲル、2008年、108分、ドイツ映画、原題:Die Welle(英=The Wave

『エクスペリメント』などに似た、実験をテーマとした映画。それの高校生版とでもいえる。アメリカで実際に起きた事件をモデルとしドイツで作られた。

高校教師ライナー・ベンガー(ユルゲン・フォーゲル)は、校長から月曜から土曜の一週間の選択実習講義で、「独裁制」をテーマに指導するよう依頼される。

生徒たちにはディスコで踊り狂ったり、ドラッグを使っていたりするような連中もいた。テーマがテーマだけに、解説だけではわかりにくいと感じたライナーは、身をもって独裁をわからせるため、発言するときは立たせたり、自分に敬称をつけてベンガー様と呼ばせたりしながら、独裁の本質について授業を進めていく。


生徒たちは、次第に興味をもち始め、ライナーは三日目から、このクラスの統一感を出すために、全員が白いシャツを着てくることを指示する。

もともと生徒たちに人気のある教師であったため、日を追うごとに、生徒たちもベンガーの個性に憧れ、ベンガーに敬礼したり、みずから挨拶の手振りを考え出したり、クラスのロゴを考え出したりし、ついにクラスは‘Die Welle’(波)という名称までもつようになり、あたかもベンガーを独裁者とする集団が出来上がってしまう。

 

生徒の中には、さまざまな者がいるのも確かで、一日ごとの授業とは別に、それに多かれ少なかれ影響を受けながら、彼らの日常やクラスメートとの人間関係も、少しずつ変化していく。

マルコは水球部の中心メンバーであり、カロというガールフレンドもいるが、カロは白いシャツを着ていく日に赤い服を着ていき、まわりから疎遠にされ、途中からは、Die Welle に反対するポスターも作ることになる。

ティムは裕福な家庭の子であったが友達もなく、ヤクを仲間にあげて友達になり、Die Welleにいることで、ようやく自分の存在意義を見出す。このティムが最も熱狂的に従順となり、ベンガーの警護まですると言い出す。

 

初めの三日ほどは、独裁指導がクラスの団結を増し、よいほうに作用している描写もあり、クラスメート同士の協力や真剣みを増すための特効薬のはたらきをしているのも事実だ。

だが、やがて、独裁的団結の下に、スタンドプレーに走る者や、マルコのように、彼女と独裁のはざまに揺れる者も出てくる。

スポーツに芝居に恋愛に、純情に生きる高校生たちが、いかに容易に、信頼する教師からの洗脳・指導にのりやすいか、また、のめりこみやすいかが、わかりやすく描かれていく。

実際、端緒はこうして、古今東西の独裁体制も築かれていったはずと考えると、テーマの選択として、なかなか類似の映画は現れないだろうし、ドイツ映画であることも興味深い。

何人かの生徒に絞って、ベンガーや仲間との関係を描写したのがよかったし、ベンガーと同じ学校で教師をする妻とのやりとりも活きている。

最後に洗脳指導は解かれるのだが、そのショッキングなラストへと向かって、映画全体が一定のテンポで進んでいく。このテンポがいい。

脚本が丁寧に書かれている。カメラは手持ちが多いが、そんなに疲れない。なぜだかシーンごとの映像にくふうがあり、また、実にきれいである。

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