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2016年11月 7日 (月)

映画 『窓』

監督:テッド・テズラフ(Ted Tetzlaff)、原作:コーネル・ウールリッチ、脚本:メル・ディネリ、撮影:ウィリアム・スタイナー、主演:ボビー・ドリスコル、アーサー・ケネディ、バーバラ・ヘイル、1949年、73分、モノクロ、アメリカ映画、原題:The Window
 
テッド・テズラフは、ヒッチコックの『汚名』などの撮影をしていたが、後に監督になっている。DVDのパッケージにラズラフとあるのはテズラフの間違い。
メル・ディネリは、『らせん階段』(1946年)などの脚本で知られる。
 
販売元はブロードウェイ。埋もれたフィルム・ノワールを発掘し、販売までおこなってくれる会社が出てきたのは、まことにうれしい。
ジュネス企画では、古い白黒の名作を出してくれた。こういう会社は、大事にしなければならない。
それぞれに、そういう需要が大きいということだろう。
 
冒頭に、イソップ物語の「狼と少年」の言い伝えが出る。
少年はいつも、狼が来た、と嘘をついていたので、本当に狼が来たとき、誰も信じてくれなかった、という話だ。
 
トミー少年(ボビー・ドリスコル)は、仲間の子供たちに、出まかせの話をするうち、会話の行きがかり上、2~3日中に引っ越すと、嘘を言ってしまう。それを聞いた近所の人たちが、翌日、引っ越すならここに住みたい人がいるから部屋を見せてくれと訪れてきた。
トミーは両親(アーサー・ケネディ、バーバラ・ヘイル)に叱られる。
 
その晩は暑かったので、トミーは非常階段で寝ることにする。上の階の外に当たるところでうとうとして目が覚めると、わずかな隙間から、その家の中が見えてしまう。そこでトミーは信じられない光景を目の当たりにした。
そのへやの住人、ケラーソン夫妻が、ある男を殺してしまったのだ。
 
翌朝、トミーは両親に話すが、嘘ばかりつくと叱られ、へやを出るなと言われる。
本当のことを黙っていられなくなったトミーは、非常階段から通りに下り、警察に行くが、やはり相手にされない。……
 
このDVDは当たりだ。わずか73分で、大きなテーマがあるわけでもないが、サスペンス映画としては秀逸だ。子供を主役にしたサスペンスであるが、出来はよい。
この程度の素材でも、作る人が作れば、立派な作品になる。
日本のサスペンス映画も見習ってほしい。
 
父役・アーサー・ケネディにしても、母役・バーバラ・ヘイルにしても、トップスターではなくても、このころ準主役級で活躍していた俳優だ。アーサー・ケネディはこの後、『必死の逃亡者』『ミクロの決死圏』などに出演している。バーバラ・ヘイルはこの後、レイモンド・バーと共演で、TVシリーズ「弁護士ペリー・メイソン」にレギュラー出演し、日本でもなじみの顔となった。
 
場所の設定がよかった。
このころのニューヨークの下町によく見られる、一般庶民のアパートが舞台だ。向かい合うアパートにロープを渡して洗濯物を干し、窓の外に非常階段があるおんぼろのアパートが舞台だ。その建物も老朽化しており、トミーたちの遊ぶところは、その建物の内側の空洞のようなところである。この老朽化しているアパートという設定が、このストーリーにはありがたい舞台なのだ。
 
脚本もすぐれている。
トミーが殺しを見たことを、両親も警察も信用しない。しかし、母親に連れられてケラーソンのへやに行くことで、逆にケラーソン夫妻は、トミーに犯行を見られたと確信し、トミーを何とかしなければ、と思い立つ。
 
前半では、トミーの目撃談を誰ひとりとして信用しないという徹底ぶりがある。後半でも、ひとりでいるトミーはケラーソン夫妻に連れ出され追い詰められていくが、三人いっしょに乗り込んだタクシーの運転手も、後部座席で喚くトミーを見て寄ってきた警官も、誰も疑惑をもたない。このあたりも徹底している。
 
つまり、トミーの話が真実であるのを知っているのは、観ているわれわれだけなのだ。それだけに、トミーが追われて屋上に逃げてからのシーンは、緊迫感が増す。
 
殺人を目撃した話はジョージ・サンダース、バーバラ・スタンウィックの『殺人目撃者』があり、子供が目撃するものには、ハリソン・フォード主演の『刑事ジョン・ブック/目撃者』がある。後者は人間讃歌の側面もあり、この映画はむしろ、時代的にも前者に近い。それも、子供を主演にしたフィルム・ノワールだ。
 
カメラは特別なこともなく普通だと思うが、白黒らしい光と影を活かした描写はあるし、トミーの顔を二回に分けてアップにするという撮り方もある。母親に連れられてケラーソンのへやに行ったとき、応対したケラーソンの妻が、坊や、何を見たって言うの?というシーンでは、この女優がカメラを見て話している。カメラ、つまり観客が、トミーの目になっているわけだ。
 
舞台は日常のなかにある場面で、上映時間も長くなく、ラスト近くまで、トミーには全く救いようのない展開で、サスペンスの基本を忠実に実現した、その意味で、背伸びをしない「誠実な」映画だ。
 
ファーストシーンで、街並が映り、トミーのアパートが映り、そのなかの一つの窓がアップされていく。次のシーンで、トミーが壁に隠れて、仲間と遊んでいるシーンとなる。
この、窓への近寄りは、ヒッチコックの『サイコ』(1960年)でマネされている。
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