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2016年8月 4日 (木)

映画 『けものみち』

監督:須川栄三、原作:松本清張、脚本:白坂依志夫、須川栄三、撮影:福沢康道、編集:黒岩義民、音楽:武満徹、主演:池内淳子、池部良、小沢栄太郎、1965年(昭和40年)、150分、モノクロ。

成沢民子(なるさわ・たみこ、池内淳子)は、割烹旅館・芳仙閣で住み込みの女中をしていた。
夫は脳軟化症で寝込んだままであり、帰った民子に悪態をつき、しかも醜い情欲の権化となっていた。

ある日、かつて相伴した常連客・小滝(池部良)から誘われ、小滝が支配人として勤務するホテルに赴く。
そのバーに、小滝に遅れて、秦野(伊藤雄之助)という胡散臭い弁護士が到着する。

貧乏で先の見えない境遇から逃れようと、小滝の誘いに乗り、秦野の言われるままに、ある仕事を引き受ける。
それは、政財界のフィクサーと言われる鬼頭洪太(小沢栄太郎)の屋敷に入り、鬼頭の身の回りの世話をしつつ欲望の相手を務めることであった。・・・・・・

俳優陣も、当時活躍中のベテラン勢をそろえ、ストーリーに厚みを増している。
民子を追う刑事・久恒に小林桂樹、ほか、芳仙閣の先輩女中に千石規子、鬼頭邸で半ば民子の敵となる米子に大塚道子など。

小滝の言うまま、夫を焼き殺してしまってからの民子のメイクはやや濃くなり、眉のかたちも変えている。音楽は、当時注目されだした現代音楽の武満徹が担当しており、その音が演出にも効いている。

鬼頭らのセリフにはっきり出てくるが、自分のような政界の黒幕が全国のヤクザ連中をも束ねているのは、左翼が騒ぎ出したときに頼りになるのは連中なのだ、という。
しかし、国を憂える黒幕も、その死とともに、同じ側にいながらライバルである反対勢力に、とって変わられる。それもまた、非常な政治の現実なのだ。

この映画を第一作として、後にテレビで三回リメイクされている。
松本清張の小説は、それ自体に抑揚があり映像化してもほぼ成功する。この映画もまた、その一つだ。

欲に駆られて、「けものみち」に立ち入ってしまえば、そこから逃れるすべはなく、自分の意志で生きることさえできないのである。しかしその数奇な運命を、映画では堪能できる。
最後まで生きるのは、先を見て、したたかな選択を実行した者のみなのである。

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