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2015年12月 8日 (火)

映画 『トラ・トラ・トラ!』 (2015年12月8日)

監督:リチャード・フライシャー、舛田利雄、深作欣二、製作総指揮:ダリル・F・ザナック、脚本:ラリー・フォレスター、菊島隆三、小国英雄、主演:山村聡、田村高廣、マーティン・バルサム、音楽:ジェリー・ゴールドスミス、1970年、143分、日米合作、カラー、シネマスコープ、原題:‘トラ・トラ・トラ・’‘TORA! TORA! TORA!’

ダリル・F・ザナックは、1950年度アカデミー賞6部門受賞の『イヴの総て』のプロデューサー、監督は『ミクロの決死圏』などのリチャード・フライシャー、菊島隆三、小国英雄は黒澤映画でおなじみの脚本家、日本側の主演は山村聡(山本五十六)、アメリカ側の主演は『十二人の怒れる男』などのマーティン・バルサム(キンメル)、その他多彩な顔ぶれである。脚本家の顔ぶれからわかるように、黒澤明も日本側監督に加わることになっていたが、映像への見解の相違から途中ではずされた。

大日本帝国海軍によるハワイ(布哇)のパールハーバー奇襲攻撃と、それに至るまでの両国の情報戦と準備の模様を、ほとんど史実を元に描いた大作。途中にintermission(幕間)を挟み、再開後が真珠湾攻撃の圧巻である。

こういう映画を観ると、CGでは追いつけないリアリティを感じる。零戦や九七艦攻などは、サイズと形態の似たアメリカの航空機を作り変えて使ったという。奇襲の際のロケはハワイで撮られている。
特に、米軍飛行場にある戦闘機が爆破されるシーンや、黒煙の上がるようす、空中戦のシーンは迫力がある。
また、朝ぼらけのなか、赤城艦上から零戦などが飛び立っていくシーンは、実に美しく力強い。

奇襲の前に真珠湾入口で潜航艇が攻撃されたことや、日本軍がオアフ島に飛来したとき航空訓練学校の飛行機が飛んでいた、操縦不能になったゼロ戦が格納庫めがけて突入した、ワシントンからの電報を米陸軍に届けたのは日系の少年である、など、かなり事実に忠実と言われるが、戦闘のさなかハワイに戻ってきた米軍の隊長機が片輪着陸したというのは創作のようだ。赤城も実際は艦橋が逆側だ。

この映画のよいところは、太平洋戦争のきっかけという歴史的事実を描きながら、政治的にどちらかに加担することなく、むしろ映画としての娯楽性というポイントをはずしていない点である。日本側では開戦までの流れはテーマからして大まかであるが、艦隊の現場の隊員らの士気はよく描かれている。アメリカ側は、ハワイとワシントンとの距離や時間差が、あたかも日本軍攻撃に対する緊張感の欠如の度合の差異のように描かれる。

何回も観ているし、その間に製作にまつわるエピソードやさまざまなレビューにも接してきたが、テーマや撮影の規模のみならず、脚本にメリハリがあり、牽引力があり、徐々に醸成される緊迫した雰囲気や迫力ある映像に富み、他の追随を許さない作品となっている。
また日本側の俳優は層が厚く、当時は有名でもなかった室田日出男らの顔が見えるのもうれしい。

カット割りがうまいのも特徴だ。短めのカットと長めのカット、ひとつのシーン内の緊迫を維持するためのカットの切り返し、アップと引きの掛け合いなど、ストーリーの方向がわかっているので、カットの転換にくふうを凝らす匠を感じる。
膨大なフィルムを使用したろうから、次のカットに移るときに無理にちょん切ったようなところも見られるし、ここにカットがあるはずだが略されたなというところもある。相当なフィルムを捨てたに違いない。

撮影のために相当な許認可と巨額の費用が必要であったろうが、両国の映画制作に対する情熱と信頼が、こうした作品を産むことになったのだ。
いろいろと話題の多い映画であるが、いずれにせよ映画史に残る金字塔であり、不朽の名作であることに異論はないだろう。

この映画では音楽の貢献も大きい。作曲が『氷の微笑』のあの甘美なメインテーマを作った作曲家と同一人物とは思えない。映画音楽の鬼才ジェリー・ゴールドスミスの天才的な音づけにより、各シーンが一層、エンターテイメント性を帯びてくる。3小節めだけ9拍にするリズムのメインテーマは、タイトルロールでは和風を意識してか三味線が奏ではじめる。この和風を意識したテーマとリズムは、この映画の日米それぞれの思惑の違いや、米軍内部の数々のずっこけぶりをも象徴しているようでおもしろい。

こういう作品こそ、映画館で観たいものだ。

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