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2013年11月14日 (木)

映画 『刑事(デカ)』

監督:ゴードン・ダグラス、原作:ロデリック・ソープ、脚本:アビー・マン、撮影:ジョゼフ・バイロック、音楽:ジェリー・ゴールドスミス、主演:フランク・シナトラ、リー・レミック、ジャクリーン・ビセット、1968年、114分、カラー、原題:The Detective

ニューヨーク市警の刑事ジョー(フランク・シナトラ)は、マンハッタンで起きた殺人事件の現場に来た。被害者は同性愛者であり、捜査線上にある男が浮かび、海辺のホテル近くで逮捕する。
どうにか自供に追い込み、男は精神錯乱のようすもあったが、死刑が執行される。

そのころ、ノーマ(ジャウリーン・ビセット)という女性が現われ、夫の会計士が競馬場で自殺したが、どうも腑に落ちないとして、再捜査を依頼してくる。
自殺そのものには疑いの余地がなかったが、この男からは各界名士にカネが流れていることが判明する。

ジョーには、あるパーティで知り合ったカレン(リー・レミック)がいて、ようやく結婚することになるが、カレンは浮気性の一面を持っていた。……

原作のロデリック・ソープは、『ダイ・ハード』の作者でもあり、この映画は、のちの大ヒット映画につながる原点である。
また、署内では上司を含め敵が多く、社会の腐敗に立ち向かっていく姿勢など、一匹オオカミのデカが登場したことで、のちの『ダーティ・ハリー』シリーズのさきがけとなったとも言われる。
これらの映画の源泉にあたる映画ということでは、貴重な価値をもっている。

音楽は、この2年後に『トラ・トラ・トラ!』を担当するジェリー・ゴールドスミスであり、ロマンチックで甘美な音入れは『氷の微笑』のほうを想像させる。
そもそも、マフィアと近く、アメリカ政界とも交わりがあり、プレイボーイとして知られる歌手のフランク・シナトラが、硬派の刑事役で主演、ということからしても失笑もので興味深い。

この映画、よく言えば、実によく練られた作品であり、タイトルを刑事としただけに、刑事の日常の仕事や私生活を含め、一刑事の生活を丸ごと描いている点で、誠実なつくりであるが、他方で、エンタメ性に乏しく、映画としてのおもしろさという点では、受けはよくないだろう。

ジョーが追い込んだ犯人は、会計士自殺の再捜査の過程で、実は別人であることがわかるのだが、大いにジョーは落ち込む。その反省もあって、カネを受け取った署内の人間や議員を告発するためにも、ジョーはバッジを返上する。そのほうが社会の敵に向かいやすいということだ。ただこれは、そう決心してパトカーを運転するシーンで終わるので、暗示で終わることになる。

カレンとの出会いや、いくつかのエピソードは、今のシーンがぼやけて回想シーンになって語られる。ほとんど病気とも言えるカレンの浮気症を承知のうえで結婚するまでのやりとりなどもあるが、別居後の現在でも、カレンはまだジョーを愛していると言う。しかしジョーは、これ以上はついていけないという態度だ。

この映画には、当時まだ珍しかっただろうが、同性愛が出てくる。最初の被害者もそうだが、死刑になる男もそうであり、そして実は、自殺した男もゲイの傾向があった。
映画中では、gay ではなく homosexual という言葉が使われているが、バカにするときは fag となる。当時のアメリカでは一層、ゲイに対する差別や侮蔑があったろうが、そういう意味でも大胆であり、先駆的内容だ。
ゲイのたまり場である港近くでの聞き込みにしても、他の刑事が若いゲイにものを尋ねるときなど、そうした態度が出ている。
このあとにヒットする『刑事コジャック』シリーズでも、一話だけゲイにかかわる話があった。

いずれにしても、ストーリーとして楽しめるような要素はないが、至って真面目に作られた一刑事の物語として評価できる作品だ。
シナトラの表情がいいが、共演者にも注目したい。

リー・レミックは『オーメン』でも知られるが、この映画の4年前の作品『酒とバラの日々』での名演技は、ジャック・レモン共々絶賛されてよいだろう。

『十二人の怒れる男』でスラム出身の陪審員を演じたジャック・クラッグマンもよい。このころはまだ、硬い役柄が多かったが、のちにTVシリーズ『おかしな二人』ではコメディアンかと思われるような軽妙な演技を見せ、日本でも日曜の朝のドラマとして人気を得た。

『ゴッド・ファーザー』『地獄の黙示録』最近では『アウトロー』で元気な姿を見せているロバート・デュバルも、ジョーとはライバルになる刑事で出ている。

『大空港』『オリエント急行殺人事件』のジャクリーン・ビセットも、この映画ではショートカットであり、最初のシーンが突然現れるシーンであり、その現われ方でも得をしている。

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