« 花を失った最近の映画(3) | トップページ | 花を失った最近の映画(ラスト) »

2013年7月 5日 (金)

花を失った最近の映画(4)

映画は映像である。言葉ではない。…これは私の映画観であり信念である。

絵や彫刻は、そこにある止まったものを鑑賞する。小説は、文字で読む。語句の前後のしかたや、言葉の選び方で、随分と表現も違ってくる。音楽は、音、旋律、リズムからなる。演劇は、舞台の上で、ナマで行なわれ、その芝居は一介だけだ。

映画はカメラに収めて、編集する。時間とともに進行するのは音楽と同じだ。

映画とテレビの違いは何か?

難しいところだが、カメラが外に出ることだろう。そういう風景を、スクリーンに取り込むのは、映画であり、同じことをテレビがやっても、スクリーンとは迫力が違う。
特に、アクションシーンは迫力が違う、ジャンル別でいえば、歴史ものや戦争ものは、スクリーンで初めて映像が生きてくる。

ヒッチコックはロケを好まなかった。たぶん、デブだったので、あまり動きたくなかったのだろう。ロケを敢行はするが、スタジオセットを好んだ。
ロケ現場を周到に写して、スタジオにそっくりのセットを作らせた。スタジオであれば、いろいろ作為ができるというのもあるだろう。

最近の映画の悪しき点がいくつかある。

1.セリフが多すぎる。

現代の映画は、言葉が多すぎる。セリフが多いということだ。
まるで、小説をそのまま映像化しているようで、再現フィルムのようだ。

たしかに、セリフがなければ話は進まないが、何でもセリフに頼るというのは、裏を返せば、監督が映像を観てきていない証拠であり、映像での表現に自信がないからとも言える。

映像には、俳優の動きや、カメラの動きも入るから、すわなち、監督に演出能力がないということになる。
映画は、カメラのフレームの中だけの世界である。そのなかをどれだけ充実させることができるか。そこに監督の手腕が発揮される。

言葉だけをべらべらしゃべらせるものは、映画でないと思っている。それは小説だ。映画は、映像で見せなければならない。

そのためには、カメラや照明、メイクが、監督の意を汲んで、縦横無尽に動いてくれないと、いい絵ができない。カメラは、それ自体が専門分野であるから、素人では限界がある。その素人がやがて、玄人になるのだから、研鑽が必要だ。

脚本は、映画の基本のすべてであると言っていい。脚本がよければ、大根役者でも、演技が気にならないくらいになる。
その脚本を基本として、どこをどう撮るか、は監督の裁量だ。

同じ人物のセリフが続くときでも、どこかで切って、別のアングルから撮ったりするのは、監督が決めることだ。それをあとで、カットして編集し、つなげてできたのが、映画なのである。
そのシーンにふさわしい映像やカット運びにするには、どうすべきか…、映画をたくさん観てきていなkれば、いい案がひらめかないだろう。

2.撮影が横着すぎる。

ある方向から撮り、その反対側から撮り、それらを組み合わせていくのは、まさにモンタージュといって、その臨場感、リアルさを醸成する技法である。

ところが、カメラは固定され、同じ向きのまま延々と映しっぱなしというのがよく見られる。
反対方向から撮って、あとで合わせるというのは、それこそ映画の基本なのだが、それをあまりやってない。

ただ撮ればいいというものでもなく、そのシーンにふさわしく、向きを変えて撮るということだ。

そういったマメさ加減がない、というのは、教えられた域を出ていっていないということだ。ズボラで横着な姿勢では、脚本がよくても映画にならない。

最近観たものでは、先だっての『臨場 劇場版』がいい例だ。元々は興味深い内容であるし、映画化するのには難しいストーリーで、一つの挑戦ともいえるのだが、何ともカメラワークが貧弱で楽しめない。
この監督は映画を観ているのだろうか。頭で作るから、こういうものになってしまう。
最後まで観たが、実は、最初の20分で退屈になった。

ついでながら、私がいくつかの例外を除いてネタバレを気にしないのは、映画はあらすじだけではないと思っているからだ。あらすじなど書いたところで、その映画を観てみなければ、そのよさも悪さもわからない。百聞は一見に如かずということだ。

『殺しのドレス』の前半の話はこうなる。

ヒマでやや性的不満をもつ婦人が、ある美術館で見知らぬ男と知り合い、そのへやまで付いて行き、満足したひとときを過ごすが、帰りのエレベーターに乗ったところで、指輪を置き忘れたことに気付き、男のへやに戻ろうと、また上の階に昇り、エレベーターを降りようとすると、開いたドアの外から、いきなり背の高い女に襲われ、そこで死亡する。

これを読んで、映画を観たつもりになるのは間違いだ。ふ~ん、そんな映画か、そのうち観てみるか…で、いいと思う。

(つづく)

« 花を失った最近の映画(3) | トップページ | 花を失った最近の映画(ラスト) »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1791668/52326916

この記事へのトラックバック一覧です: 花を失った最近の映画(4):

« 花を失った最近の映画(3) | トップページ | 花を失った最近の映画(ラスト) »