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2013年6月 6日 (木)

映画『アウトレイジ ビヨンド』

監督・脚本:北野武、音楽:鈴木慶一、主演:ビートたけし、小日向文世、三浦友和、2012年、112分、R15+。

この映画のファンには申し訳ないが、見るもみじめな映画であった。
いくつかのシーンに迫力を感じたところと、ロケ設定としていいところがあったので、かろうじてそれだけの理由で日記欄となった。それがなければ、つぶやきで、切って捨てておしまいの映画だ。

前作『アウトレイジ』も同じ感想をもった。その意味では、よくいえば、頑なに方針を変えなかったということであり、悪くいえば、全く反省はないということになる。つづきとして作ったのだから、やむを得ないだろう。
この二つの映画は、全体に評価が高くないのがその証拠だ。
いわば、出る俳優のファンが見れば高評価であるが、そうでなければ低評価になるという、よくあるパターンである。

出演陣は前作同様、独自に主役・準主役をできる俳優ばかりだ。西田敏行、加瀬亮、松重豊、名高達男、光石研、中尾彬、塩見三省、神山繁、白竜、ほかにセリフはないが、高橋克典も出ている。女優の出るシーンは二か所しかない。

以下、映画.comより、概略を引用。
「悪人同士の壮絶な権力争いを描いたバイオレンス映画「アウトレイジ」の続編。関東最大の暴力団組織・山王会の抗争から5年。関東の頂点を極め、政治の世界に進出するなど過剰に勢力拡大を進める山王会に対し、組織の壊滅を図る警察が動き始める。関西の雄ともいえる花菱会に目をつけた警察は、表向きは友好関係を保っている東西の巨大暴力団組織を対立させようと陰謀を企てる。そんななか、以前の抗争中に獄中死したはずのヤクザ・大友が生きていたという事実が持ち出され、突然出所を告げられる。」

続きものでストーリーに改変が加えられることはよくあるので、それは問題ない。問題は今回もやはり、ストーリー展開とカメラにある。

要するに、何をとっても、つまらないのだ。

冒頭にナレーターのようにセリフが入り、これからの展開の前置きとしての情報が披露される。これはよくある手としてやむを得ないのだが、ポイントを押さえて、次々にシーンが移動しないため、あるところでは時空を飛び、あるところでは、ほぼ同じ現在で進む二か所がすぐに語られる。シーンが飛ぶ際にルールがないのも原因のひとつだ。

これはつまるところ、脚本が生煮えであることによる。関東最大の暴力団組織・山王会、といい、その会長の三浦友和といい、言葉の説明だけで、映像からはとてもそれらしきものが感じられない。他の面々も同様である。

大きな屋敷、5分に一度は出てくる黒塗り国産高級車の群れ、そのドアの開け閉めの音、豪華な和室・洋室など、セットそのものは凝りに凝っているが、それだけのことをした甲斐がない。間がなくスポットだけで展開を図るのには限界がある。

主役・準主役が初めて登場するシーンはどんなものか。特に、ヤクザ映画や迫力をもたせる映画の場合、その初登場シーンは大事だ。それがまるで、普通のサラリーマンの登場のようであって重みがない。

言葉づかいが売りの映画というが、種々のヤクザ言葉や隠語での応酬シーンは滑稽なほどにリアルではあっても、その地となるストーリーやことの運びが弱いので、セリフだけが目立って、大人の学芸会みたいである。

終わってみれば、たしかに皆、裏切りを繰り返す「全員悪人」ではあるが、その悪なるものが、映像や演技と結びつかず、やはり怒声を伴う言葉(セリフ)頼みであるので、興ざめとなる。

カメラも同様で、おもしろみがない。人が殺される→殺された者が映る→その光景を見る者が映る、…これでは、しらける。ゆっくりとした横移動はよい雰囲気であるが、これも、ただ繰り返されると意味がない。

バストショットやアップにも、カメラには多少とも効果をもあたせて使い分けるのが、ここではかなりアトランダムである。
カネがかかっているわりには、ムダにするフィルムが少なかったのではないだろうか。カット数が少ないのも、見ていてつまらなくなる原因だ。

カメラの向こうでは、何がしか激しい啖呵が切られたりしていても、カットや編集などの手数を省いたような感があり、映像として仕上がっていないので、おもしろみがない。

この映画は結局、瞬間的なシーンの激しいやりとりや、殺しや殴る行為の現場を見せたがるだけの映画であり、ストーリーも人間の生き様も、放置されたままになっている。あるいは、それでよしとしている。

ヤクザがヤクザに見えず、親分が親分に見えず、醜い関係が醜く見えない。
観終わって思った、いったい、今、何を観たのだろうか、と。

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