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2013年6月 5日 (水)

映画 『サイコ』 (2013年6月5日)

監督:アルフレッド・ヒッチコック、原作:ロバート・ブロック、脚本:ジョセフ・ステファノ、音楽 バーナード・ハーマン、主演:アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー、ジョン・ギャヴィン、ヴェラ・マイルズ、1960年、109分、モノクロ、原題:PSYCHO

それほど懐ぐあいのよくない男サム(ジョン・ギャヴィン)とOLのマリオン(ジャネット・リー)は、昼休みを利用して、ホテルであわただしい密会を済ませたところだ。
マリオンはオフィスに戻ると、ある取引にかかわる4万ドルの現金を、銀行に預金するよう頼まれる。マリオンはそれを横領し、車に乗って逃げた。

途中、車のなかでうたた寝をし、警官に怪しまれるが、中古屋でカリフォルニアナンバーの車を買い、さらに逃走中、夜となり雨も降ってきたので、たまたま目についたベイツ・モーテルに寄った。
ようやく出てきたのは、背の高い爽やかな青年ノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)であった。……

何回か見てきて今また観ると、やや切れ味に欠けるようなところもある。その後この映画の影響を受けた作品が、この映画を乗り越えていったからだ。中でも撮影のしかたにおいて、その後のさまざまな映画制作に影響を与えた作品だ。

しかし、虚心坦懐に久しぶりに観てみても、ヒッチコックの職人気質ともいうべき演出を、随所に見ることができ、サスペンスを見ていながら楽しい気分になってしまう。とにかく芸が細かい。

冒頭に、アリゾナ州フェニックス、12月11日金曜日、午後2時43分と出る。そこから始まる。

ヒッチコックはこの映画までに、サスペンスはだいぶ作っているのだが、女性がひとりシャワーを浴びているという完全に無防備な状況で、一方的に殺されるのと、人間の異常心理を絡ませたストーリーの映画化は初めてで、少なくとも当時の映画界ではセンセーショナルな作品となった。

主役が途中で入れ替わったり、引け目をもつ女性がひとりでいるところを刃物で襲われたり、別人格が乗りうつって行われる殺人などは、ヒッチコックを尊敬するブライアン・デ・パルマの『殺しのドレス』にそっくり受け継がれている。

モテルの受付奥の応接室でノーマンとマリオンが話すとき、ノーマンを下から映すと、背景の天井には鳥の剥製がぶらさがっているなどフレーム内も無気味だが、シャワーの水を下からとらえたり、穴から隣室を覗く目や、血の流れていく排水溝のアップがそのまま死んだマリオンの目のアップに移るなど、当時は予想を超える演出だった。

探偵が階段を登り、切られて転落していくシーンは、見たとおりの合成であるが、こうした撮影方法を大胆に採り入れたのもこの映画の特徴だ。

わざわざビルの外から室内にカメラが入るファーストシーン、警官が車を覗きこむときは横からだが、次に室内からとらえると正面の顔でサングラスをかけているのがはっきりわかり圧迫感が出る。さりげないが、中古屋でマリオンを怪しむさきほどの警官が、道路を横断させてパトカーを乗りこませてくるあたりは、計算されつくした演出である。

後半は、死亡した母親を心に宿したままの二重人格をもつノーマンと、行方不明になった姉を探す妹ライラ(ヴェラ・マイルズ)とサムが主役に変わるが、当初からのノーマンの挙動不審や、どもった話し方、異常な目つきなど、サイコというタイトルにふさわしい展開となり、一気にラストへと進む。

丘にたたずむ薄気味悪い家(これはセット)や、主役の交替となる浴室での殺人シーンなど、カメラのアングル、カット、編集によるサスペンスの盛り上げ方など、こうしたあらゆる試行錯誤がその後のサスペンス映画に与えた影響は計り知れない。

サスペンスは元来、人間の心理にうったえるものでなければならず、それを映像化するには、脚本がしっかり書きこまれていなければならない。

現代でもサスペンス映画は次々に作られているが、より巧妙でおもしろい内容に仕上がっているのは、基本にヒッチコックのベースがあるからだろう。

今から観ると物足りなくみえるのはしかたない。しかし、大金を持ち逃げしているだけでもハラハラ感があり、シャワーでの殺人だけでなく、全編に漂う不安や焦燥感を、カメラのアングルやアップ、細かいカットと編集などで表現したことで、異常心理殺人というサスペンス分野の先駆的な映画となった。

『サイコ』の前に作られた『ダイヤルMを廻せ』(1954年)『裏窓』(1954年)『めまい』(1958年)『北北西に進路を取れ』(1959年)などはカラーだが、こちらは白黒である。映像効果上、故意に白黒にしたのだろう。

バーナード・ハーマンの音楽も、ミステリアスであったり、冒頭のタイトルロールのように、焦燥感を煽るような曲調であったりして、映画の各シーンによくマッチしている。音楽の効果も計り知れない。

この映画以来、美女と時間のある男と刃物の三つが、サスペンスの必要条件となった。ブスと時間のない男と拳銃は、サスペンスにはなじまない。

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